2026/02/16

⚾️MLB Baptism: The Solitude of the Diamond and the Hidden Affection in Silence / メジャーリーグの洗礼:ダイヤモンドを回る孤独と、静寂に隠された深い愛情

メジャーリーグの洗礼:ダイヤモンドを回る孤独と、静寂に隠された深い愛情

2026/02/16 | Baseball Freak Echoes 考察

メジャーリーグベースボール(MLB)という、世界最高峰の選手たちが集う聖地。そこには数え切れないほどのデータや戦術が渦巻いていますが、一方で、データでは決して測ることのできない「伝統」や「儀式」が息づいています。その中でも、私が最も愛してやまない光景の一つが、本塁打を放った新人を待ち受ける「サイレント・トリートメント」です。

想像してみてください。過酷なマイナーリーグのドサ回りを耐え抜き、ようやく辿り着いた夢の舞台。数万人の観客が見守る中、完璧なスイングで捉えた白球が夜空を切り裂き、スタンドへと消えていく。ダイヤモンドを一周し、興奮と喜びに満ち溢れた状態でベンチへ戻ってきた打者を待ち受けているのは、スタジアムを揺らす大歓声とは真逆の、耳を疑うような「沈黙」です。

静寂という名の祝福

チームメイトの誰一人として、彼を見ようとしません。ハイタッチを求める手は空を切り、祝福の言葉を期待して向けた視線は、虚しくもそらされる。この異様なまでの「無視」こそが、実はMLBにおける最高級の洗礼であり、チームの一員として認められた何よりの証なのです。あなたはどう思うだろうか?この残酷とも思える数秒間こそが、メジャーリーガーとしての真の門出なのだと私は確信しています。

この儀式の象徴的な事例として、エドウィン・リオスのエピソードを挙げないわけにはいきません。彼は2019/08/14、自身の地元であるフロリダ州で行われた試合で、家族や友人が見守る中、記念すべきメジャー初本塁打を放ちました。打球の行方を見届けた家族が狂喜乱舞する一方で、彼がベンチに戻った瞬間に広がったのは、氷のような静寂でした。

実況席が「おめでとう、エドウィン・リオス!」と声を枯らす中、ベンチの仲間たちは、あたかもそこに誰も存在しないかのように、黙々とグラブの手入れをしたり、虚空を見つめたりしています。

この「無視」の時間が長ければ長いほど、その後に訪れる祝福の爆発力は高まる。私には、この静寂が「お前もこれでプロの仲間入りだ」という、ベテランたちの無言のメッセージに聞こえてなりません。

「洪水門」を開く一撃:エドウィン・リオスに見るパワーの証明

初本塁打という大きな壁を突破することは、若手打者の心理に計り知れない影響を与えます。技術的な側面から見れば、それは「自分のスイングがメジャーの球に通用する」という確信に変わる瞬間であり、戦略的には相手投手への強力な牽制となります。

リオスが初本塁打を放ったあの夜、実況者が口にした「洪水の門(floodgates)が開く」という表現は、まさにその本質を突いていました。1本目の後のサイレント・トリートメントによって、リオスは戸惑いながらも、自分が成し遂げたことの重みを噛み締めたはずです。そして、その心理的な「溜め」が、驚くべき結果を引き寄せました。

彼はその直後の打席で、2打席連続となる本塁打を2階席へと叩き込んだのです。1本目の余韻に浸る暇もなく、今度は誰もが認めざるを得ない「圧倒的なパワー」を証明してみせました。デーブ・ロバーツ監督までもが平然と無視を決め込むその徹底ぶりには、プロフェッショナルとしての厳しさと、愛弟子のさらなる飛躍を願う深い期待が同居しています。

透明人間とのハイタッチ:リッチー・シェーファーの孤独な闘い

過酷なペナントレースを戦い抜く上で、ユーモアはチームの精神的支柱となります。2015/08/04にリッチー・シェーファーが自身のメジャー初安打を本塁打で飾った際に見せた「孤独なパフォーマンス」は、野球界に語り継がれるべきクラシックな名場面です。

シェーファーが意気揚々とベンチへ戻ると、そこには彼を一人ぼっちにするための、完璧に訓練された静寂が待っていました。実況が「これはさらにひどい(even worse)」と爆笑しながら伝えた通り、仲間たちは一切、彼と目を合わせようとしません。そこでシェーファーが取った行動は、まさに天才的でした。彼は誰もいない空中に向かって、あたかもそこに親友がいるかのようにハイタッチを繰り返しながらベンチを往復し始めたのです。

演出家としてのベテラン:バイロン・バクストンとトリー・ハンター

サイレント・トリートメントが成功するかどうかは、ベテランたちの演出力にかかっています。バイロン・バクストンが2015/09/27に初本塁打を放った際、その舞台裏で指揮を執っていたのは、名手トリー・ハンターでした。

ハンターは全員に向かって「あいつを無視しろ」と号令をかけました。この指示は打撃コーチにまで徹底されていました。バクストンの表情には、喜び、困惑、そして一抹の不安が入り混じっていました。しかし、数秒の静止のあと、ハンターたちが一斉に彼に飛びかかり、手荒い祝福の嵐が巻き起こった瞬間、バクストンの顔は最高のカタルシスに包まれました。無視されることの孤独を知るからこそ、その後の祝福がこれ以上ない温かさを持って心に刻まれるのです。

不可能を現実にした男:バートロ・コローンの「226回目の事件」

2016/05/07、当時43歳のベテラン、バートロ・コローンが放ったキャリア初本塁打は、まさに奇跡でした。「不可能なことが起きた!」と実況が絶叫する中、コローンは巨体を揺らしながら、人生で最も長いダイヤモンド一周を楽しみました。

コローンがベンチに戻る頃、選手たちは彼を無視するどころか、ベンチを完全に空け、裏通路まで避難してしまったのです。実況はこれを「究極の無視(ultimate blowoff)」と表現しました。43歳、キャリア226回目の登板。その長いキャリアの中で一度も成し遂げられなかった一撃への、これ以上ない敬意。一人、誰もいないベンチで、しかし満面の笑みを浮かべながら歩き続けるコローン。その先に待っていたのは、通路の奥での狂乱のような祝福でした。これほど愛された選手が他にいたでしょうか。

新時代のパワーと変わらぬ伝統:チョーリオとデゼンゾ

現代野球でもこの伝統は頑なに守られています。2024/04/03、ジャクソン・チョーリオが放った初本塁打の際、ベンチの重鎮ウィリー・アダメスが見せたのは、完璧な「石のような無反応」でした。どれほど才能に溢れていようとも、まずはこの「孤独」を通らなければならない。それがMLBの掟なのです。

また、ザック・デゼンゾが2024/08/11にフェンウェイ・パークで放った437フィートの特大弾に対しても、ベンチは「完全なる無関心」で応えました。この様式美は、個人の突出した才能を尊重しつつも、それをチームという大きな枠組みの中に謙虚に組み込ませるための、実に洗練された「教育」であると私は考えます。

静寂の後の大歓声が教えてくれること

サイレント・トリートメント。それは、孤独を通過儀礼として、真の仲間を手に入れるための聖なる儀式です。私がこの伝統に惹かれるのは、そこに「お前はもう、俺たちの家族だ」という、どんなスピーチよりも力強い愛情を感じるからです。

あなたが次にスタジアムや画面越しに若き打者の初本塁打を目撃したとき。どうか、その後のベンチの「静寂」に注目してみてください。選手たちの無関心な横顔の裏側に、どれほど熱い祝福の気持ちが隠されているか。それを知る時、野球というスポーツは、もっと深く、もっと人間味溢れるものに見えてくるはずです。

MLB Baptism: The Solitude of the Diamond and the Hidden Affection in Silence

2026/02/16 | Analysis by Baseball Freak Echoes

MLB is a sanctuary where the world's elite athletes gather. While it's a vortex of data and strategies, it's also home to "traditions" that data can never measure. Among these, the sight I cherish most is the "Silent Treatment" awaiting a rookie after their first home run.

A Benediction Named Silence

Imagine rounding the bases, heart racing with pure joy, only to return to a dugout that greets you with an unbelievable "silence." Not a single teammate looks at you. Your hand, reaching for a high-five, cuts through empty air. This peculiar "shunning" is the highest form of baptism—a definitive sign that you have been accepted into the brotherhood.

The story of Edwin Rios (2019/08/14) is quintessential. While his family erupted in madness in the stands, the moment he stepped into the dugout, he was met with an icy stillness. The longer the "ignore" lasts, the more explosive the inevitable celebration becomes. To me, this silence screams: "Welcome to the show, kid."

Opening the Floodgates: Edwin Rios

The night Rios hit that first homer, the announcer's phrase "the floodgates are open" hit the nail on the head. Through the silent treatment, Rios likely felt the weight of his achievement. That psychological build-up led to an incredible result: he crushed a second home run into the upper deck in his very next at-bat. Even Manager Dave Roberts played along, showcasing a blend of professional toughness and deep expectations.

High-Fiving Ghosts: Richie Shaffer

On 2015/08/04, Richie Shaffer turned his first Major League hit into a home run. As the broadcasters laughed, calling it "even worse" than usual, not a single teammate made eye contact. Shaffer’s reaction was genius: he began high-fiving thin air, walking up and down the dugout as if his best friends were right there. Through this, a rookie confirms they are actually at the very center of attention.

The Veterans as Directors: Buxton and Hunter

On 2015/09/27, the master conductor behind Byron Buxton's baptism was Torii Hunter. He commanded everyone: "Give him the cold shoulder." Buxton’s face showed confusion and anxiety, but when the team finally pounced on him in celebration, it was pure catharsis. The silence makes the eventual warmth unforgettable.

The Impossible Real: Bartolo Colon

On 2016/05/07, the 43-year-old Bartolo Colon hit his first career home run. "The impossible has happened!" the announcer screamed. By the time he returned, the dugout was empty—the ultimate sign of respect for a veteran legend. Walking alone with a massive grin, the madness waiting in the tunnel was his reward. It remains one of the most beloved moments in history.

New Era, Unchanging Tradition

In 2024, stars like Jackson Chourio and Zach Dezenzo still face this "stone face" or "total indifference." No matter how far the ball travels, every rookie starts at the bottom. This aesthetic is a sophisticated form of education, integrating individual brilliance into the framework of the team.

What the Silence Teaches Us

The silent treatment is a sacred rite of passage—passing through solitude to gain true brothers. It carries a message more powerful than any speech: "You’re family now." Next time you witness a rookie’s first home run, look past the flight of the ball. Watch the "silence" in the dugout, and you'll see the true heart of the game.

No love?! 🤣 MLB hitters receive the silent treatment after hitting home runs! 🤫

© MLB / YouTube official channel. The copyright of the video belongs to MLB and the distributor.

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