2025/11/13

[Column] 📖第6回:Mike Brosseau──Chapmanからの“リベンジ弾”、控え選手の物語と因縁の決着 📖Episode 6: Mike Brosseau — A "Revenge" Blast off Chapman, The Story of a Role Player and the Settlement of a Grudge

第6回:Mike Brosseau──Chapmanからの“リベンジ弾”、控え選手の物語と因縁の決着

第6回:Mike Brosseau──Chapmanからの“リベンジ弾”、控え選手の物語と因縁の決着

打率.240──この数字を見て、あなたはどう感じるだろうか。

「控え」「ユーティリティ」「一発屋」──そんな印象が浮かぶかもしれない。

だが、Mike Brosseau(マイク・ブロッソー)はその数字を超えて、記憶に残る“リベンジの一打”を放った。

2020年、ALDS第5戦──最速投手Aroldis Chapmanからの決勝ホームラン。それは、数字では測れない“記憶の価値”を象徴する、現代野球のハイライトだった。


🧍 Mike Brosseauとは誰か?──ドラフト外からのユーティリティ

Mike Brosseauは1994年生まれの右打ち内野手。特筆すべきはそのキャリアの始まりだ。彼はドラフト外(Undrafted)からタンパベイ・レイズに入団し、そのハッスルプレーとユーティリティ性でMLBの舞台まで這い上がった。

主に三塁、一塁、二塁を守るユーティリティ選手として、右投手に強い打者として起用されることが多かった。通算打率.240、OPS.719と、数字だけ見れば「控えの便利屋」という評価が妥当だろう。

しかし、彼のキャリアは、2020年のポストシーズン、ニューヨーク・ヤンキースとの因縁の対決によって、決定的に変わる。


📊 Mike Brosseau 通算成績(2019–2023)と爆発した場面力

項目成績
試合数237試合
打率.240
本塁打27本
打点78打点
OPS.719
ポストシーズン試合数11試合
ポストシーズンOPS.750
2020年ALDS第5戦 HR決勝ソロホームラン

🥊 因縁の発端──危険球と警告

Brosseauとヤンキースの守護神Aroldis Chapmanの対決には、深い因縁があった。

2020年9月1日、シーズン中の対戦で、ChapmanはBrosseauの頭部付近に時速101マイル(約162.5km/h)の剛速球を投じた。この危険球は、レイズ側から「故意ではないか」と疑われ、両軍のベンチ総出の乱闘寸前となり、ケビン・キャッシュ監督(レイズ)とアロン・ブーン監督(ヤンキース)が激しい舌戦を繰り広げるきっかけとなった。

この因縁は、コロナ禍で無観客だったにもかかわらず、ファンやメディアの間に緊張感を生み出した。そして、この因縁が、ALDS第5戦という最高の舞台で決着の時を迎えるのだ。


🚀 2020年ALDS Game 5──“リベンジ弾”が決めた

2020年10月9日、サンディエゴの球場で行われたALDS第5戦。レイズとヤンキースが2勝2敗で迎えた最終戦は、1-1の緊迫した展開で進んだ。

8回裏、打席にはMike Brosseau。マウンドには、因縁の剛速球投手Aroldis Chapman。

Brosseauは、Chapmanの剛速球を10球粘り続けた。カウント3ボール2ストライク、10球目。内角高め、時速100.2マイル(約161.2km/h)のファストボールを、Brosseauは完璧に捉えた。打球は左中間スタンドへ一直線。

決勝ソロホームラン!

実況: "REDEMPTION! Mike Brosseau gets his revenge!"(リベンジだ!マイク・ブロッソーが復讐を果たした!)

この一発でレイズは2-1で勝利し、リーグ優勝決定戦へ進出。ドラフト外の控え選手が、球界最速の剛腕から、因縁を乗り越えてチームの運命を決める決勝弾を放った。彼のホームランは、数字では測れない、「物語と感情の爆発」という最高の価値を刻みつけたのだ。


Baseball Freak的考察──なぜ記憶に残るのか?

Mike Brosseauが記憶に残る理由は、その「ドラマの完全性」にある。

  1. 究極の対決構造: 打率.240の控え選手 VS 100マイル超の剛腕クローザー。
  2. 因縁の決着: 9月の危険球事件に対する、最高の形での「リベンジ」。
  3. 場面の重要性: シリーズを決める最終戦、同点の8回裏。

彼は、打率やWARといったスタッツ(通算1.5)では測れない、「感情のエネルギー」「物語の求心力」を持っていた。彼のホームランは、技術的な分析を超え、ファンのカタルシス(感情の浄化)となった。

Baseball Freakは断言する。Brosseauの一発は単なる1点ではない。それは、「控え選手の逆襲」という、野球が持つ最も感動的なテーマを具現化した、記憶の金字塔である。


系譜──他の“記憶の価値”選手たち

Orlando HernándezPSでの異常な勝負強さ(投手枠)
Tony Womack2001年WSでの同点打
Adam KennedyALCSでの3HR、爆発力

問いかけと余韻

あなたの記憶に残る“打率.240の英雄”は誰ですか?

それは、数字で説明できるものですか?それとも、あの10球粘った末に放たれた、因縁の決着の瞬間が心に残っているのでしょうか。

Mike Brosseauは、野球は時に、最も地味な男に、最も劇的なスポットライトを当てることを教えてくれた。

Baseball Freakは、これからも“数字の裏にある物語”を追い続ける。次回は「Orlando Hernández編」。ポストシーズンで異常な勝負強さを見せた“エル・デューク”の記憶に迫る。

Mike Brosseau battled through a 10-pitch at-bat against Aroldis Chapman and launched a CRANKS home run to put the Rays ahead!

©MLB / YouTube公式チャンネルより引用。動画の著作権はMLBおよび配信元に帰属します。

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