2026/01/10

[Column]🧢 Baseball Freak Special: Part III-9 Roy Halladay The Hell Behind Perfection: The Story of Roy Halladay’s "Unstoppable" Spirit / 第三部-9 Roy Halladay
完全試合の裏にあった地獄。ロイ・ハラデイという「不屈」の物語

🧢 Baseball Freak特集:第三部-9 Roy Halladay
完全試合の裏にあった地獄。ロイ・ハラデイという「不屈」の物語

私はこれまで何千という試合を見てきたが、本当の意味での「完璧」に出会ったのは数えるほどしかない。それは、スコアブックに刻まれる冷徹な数字か、それとも観る者の記憶に焼き付く一瞬の輝きか。私たちはしばしば、記録上の完璧さを前にして、その裏側にある生身の人間の葛藤や苦悩を見過ごしてしまう。

2010年5月29日、フィラデルフィア・フィリーズのロイ・ハラデイは、フロリダ・マーリンズを相手に27人の打者を一人も塁に出すことなく抑えきり、MLB史上20回目となる完全試合を達成した。それは彼の輝かしいキャリアの頂点を象徴する偉業であり、野球史に永遠に刻まれる金字塔だ。しかし、この完璧な一夜は、彼の物語のほんの一片に過ぎなかった。

[Video: ロイ・ハラデイ、2010年完全試合の歴史的瞬間]

この記事は、「ドク」の愛称で知られた完璧な投手の、完璧とはほど遠い苦闘と再生のドラマを紐解くものである。地獄の淵から這い上がり、栄光の頂点を極め、そしてあまりにも早くこの世を去った一人の男。彼の人生が教えてくれるのは、記録の向こう側にある、最も人間らしい物語の価値である。

偉業の頂点:同じ年に達成された二つの「伝説」

2010年、長年エースとして君臨したトロント・ブルージェイズを離れ、フィラデルフィア・フィリーズへ移籍したハラデイの胸には、一つの悲願があった。それは、これまで一度も経験したことのなかったポストシーズンのマウンドに立つこと。初めて体験する優勝争いに、彼は「毎日フィールドに来るのが楽しくて仕方ない」と、まるで子供のように胸を躍らせていた。その渇望と新天地の期待が共鳴し、野球史に残る驚異的なシーズンが生まれた。

その日は2010年5月29日、敵地マイアミでのマーリンズ戦。ハラデイの投球は初回から冴え渡っていた。試合が進むにつれ、球場は静かな興奮に包まれていく。そして9回裏、二死。運命の一球。打球が三塁へ飛んだ瞬間、三塁手フアン・カストロはボールを掴むと、スピンしながら、完璧な夜を締めくくる完璧な送球を一塁へ投げ込んだ。MLB史上20回目のパーフェクトゲーム。27人を打ち取り、マウンドでチームメイトにもみくちゃにされる中で、ポーカーフェイスで知られた男は、ようやく満面の笑みを浮かべた。

この年のハラデイの伝説は、これだけでは終わらなかった。悲願だった初のポストシーズン進出を果たし、10月6日、シンシナティ・レッズとのナショナルリーグ地区シリーズ第1戦のマウンドに上がる。許した走者はわずか一つの四球のみ。9回を投げ抜き、ノーヒットノーランを達成した。ポストシーズンでのノーヒッターは史上2度目の快挙。同一シーズンに完全試合と別のノーヒットノーランを成し遂げたのは、MLB史上初の投手となった。

地獄からの復活:一度は野球を辞めようと考えた男

1998年にメジャーデビューしたハラデイだが、2000年に防御率10.64という歴史的不振を記録。翌2001年、彼はマイナーリーグの下位クラスAまで降格させられた。彼は当時を振り返り、「野球を辞めることまで考えた」と語っている。

しかし、彼はここで終わらなかった。投手コーチのメル・クイーンと共に、オーバースローから腕の角度を下げ、シンカーやカッターといった「動くボール」に磨きをかけた。かつてのパワーピッチャーとしての自分を捨て、打たせて取る技巧派へと自らを再発明したのだ。同時にスポーツ心理学を学び、精神面を強化した。この再生が、2003年のサイ・ヤング賞へと繋がっていく。

悲願と悲劇:ワールドシリーズの夢、そして早すぎる死

2013年、彼は引退を決意する。最後に古巣ブルージェイズと1日契約を結び、キャリアをスタートさせた場所でユニフォームを脱ぐという、彼らしい律儀な選択だった。しかし、引退から4年後の2017年11月7日、彼が操縦する小型飛行機が墜落し、40歳という若さでこの世を去った。あまりにも突然で、悲劇的な死だった。

彼の死後、2019年にハラデイは資格取得1年目でアメリカ野球殿堂入りを果たした。殿堂に飾られるプレートの帽子には、特定のチームロゴを入れないことが家族によって決定された。これは、ブルージェイズとフィリーズの両球団に敬意を表したためである。

[Video: 2019年 野球殿堂入り式典での感動的なスピーチ]

ロイ・ハラデイ 年度別投手成績 (1998-2013)

年度球団登板先発完投勝利敗戦投球回奪三振防御率WHIP
1998TOR2211014.0131.930.79
1999TOR3618187149.1823.921.57
2000TOR191304767.24410.642.20
2001TOR1716153105.1963.161.16
2002TOR34342197239.11682.931.19
2003TOR36369227266.02043.251.07
2004TOR2121188133.0954.201.35
2005TOR19195124141.21082.410.96
2006TOR32324165220.01323.191.10
2007TOR31317167225.11393.711.24
2008TOR343392011246.02062.781.05
2009TOR323291710239.02082.791.13
2010PHI333392110250.22192.441.04
2011PHI32328196233.22202.351.04
2012PHI25250118156.11324.491.22
2013PHI131314562.0516.821.47
合計MLB416390672031052749.121173.381.18

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