2025/11/02

[Column] この仲間と、もう一度──ブルージェイズが刻んだ“最後の夏” 🛡️Once More With This Team — The Final Summer of the Blue Jays

この仲間と、もう一度──ブルージェイズが刻んだ“最後の夏”

この仲間と、もう一度──ブルージェイズが刻んだ“最後の夏”

ワールドシリーズが終わった。歓喜に沸くドジャースのロッカールームの向こう側で、静かに涙を拭うブルージェイズの選手たちがいた。

敗者の物語は、いつも静かだ。だが、その静けさの中にこそ、野球の本質があるのではないかと、私は思う。

「もう、同じメンバーで試合をすることはないんだよね」

ある選手がそう呟いた。誰に向けた言葉でもない。ただ、自分自身に言い聞かせるように。その言葉が、胸に刺さった。

今年のブルージェイズは、決して派手なチームではなかった。スター選手が並ぶわけでもない。だが、彼らは“チーム”だった。誰かが打てば、誰かが守る。誰かが崩れれば、誰かが支える。そんな連鎖が、9月の快進撃を生んだ。

そして、10月。彼らは奇跡のような戦いを重ね、ついにワールドシリーズの舞台に立った。

だが、夢はあと一歩届かなかった。

敗戦後、クラブハウスで選手たちは言葉少なだった。だが、ある若手がこう語った。

「このチームで戦えたことが、僕の誇りです。勝てなかったことは悔しい。でも、僕はこの仲間を一生忘れません」

その言葉に、ベテランが静かに頷いた。年齢も、国籍も、キャリアも違う選手たちが、同じユニフォームを着て、同じ目標に向かって走った。その時間は、何にも代えがたい。

野球は、勝敗だけでは語れないスポーツだ。ときに、敗れたチームのほうが、深い物語を残す。

このブルージェイズの物語も、そうだ。

来季、彼らの多くは別々の道を歩むだろう。FA、トレード、引退──プロの世界は、残酷なほどに流動的だ。

だが、2025年の秋、彼らが共に過ごした時間は、確かに存在した。

「このチームメイトが最高だった」

そう語った選手の目には、涙があった。だが、その涙は、悔しさだけではない。誇りと、感謝と、愛情が混ざった、複雑な涙だった。

あなたは、そんな経験をしたことがあるだろうか?

勝てなかったけれど、心から「この仲間と戦えてよかった」と思える瞬間。

それは、人生の中でも、そう何度も訪れるものではない。

野球は、記録のスポーツだ。だが、記憶のスポーツでもある。

ブルージェイズの選手たちが、いつか別のユニフォームを着てプレーするとき、ふとこの秋を思い出すだろう。

あのダグアウトの空気。あのロッカールームの笑い声。あの敗戦後の沈黙。

そして、心の中でこう呟くのだ。

「もう一度、あの仲間と──」

それは叶わない願いかもしれない。でも、そんな願いを抱けるほどの時間を過ごした彼らは、きっと幸せだったのだと思う。

2025年のブルージェイズ。彼らは、勝者ではなかったかもしれない。

でも、彼らは“チーム”だった。

そして、その記憶は、永遠に残る。

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