2025/12/06

[Trivia] 🐧Trivia about the Mound and Pitcher's Plate  /  マウンド・ピッチャープレートに関するトリビア

マウンド・ピッチャープレートに関するトリビア - Baseball Trivia

マウンド・ピッチャープレートに関するトリビア

マウンド・ピッチャープレートに関するトリビア

トリビア 6-1:マウンドの高さは「科学と本塁打の歴史」で変動してきた

マウンドの高さは、公認野球規則で厳格に定められています(日本ではホームプレートから10インチ=25.4cm)。しかし、この高さは固定されていたわけではありません。

ベーブ・ルースら強打者が活躍した「ライブボール時代」には、投手有利にするためにマウンドの高さが一時的に高くされました。逆に、1968年にボブ・ギブソン投手が防御率1.12という驚異的な記録を樹立した「投高打低の年」の翌年、「打者有利」にするためにマウンドの高さが5インチ(約12.7cm)も下げられ、現在の高さになりました。

マウンドの高さは、野球という競技を「投打のどちらに優位にするか」というバランスを調整するために、歴史的に意図的に操作されてきた「競技の調整弁」なのです。

トリビア 6-2:マウンドから本塁までの距離は「20ヤード」から「60フィート6インチ」へ

現在、ピッチャープレートからホームベースまでの距離は「60フィート6インチ(約18.44m)」と世界共通で定められています。しかし、初期の野球(1845年頃)では、投手が打者に対して下手投げでしか投げてはいけないルールだったため、距離はわずか「45フィート(約13.7m)」でした。

その後、上手投げが導入されると打者有利になりすぎたため、距離は「50フィート」→「55フィート」と徐々に遠くなりました。

そして1893年、距離が現在の「60フィート6インチ」に定められました。この「6インチ(15.24cm)」という半端な数字は、距離を再測定した際の手違いやミスで生まれたと言われており、歴史的な偶然の産物であると考えられています。

トリビア 6-3:マウンドが「傾斜している」明確な理由

マウンドは平坦ではなく、プレート(板)の前端から18インチ(約45.7cm)の地点までは水平ですが、そこからホームプレートに向けて1フィートにつき1インチ(約2.54cm/30.48cm)の割合で緩やかな「傾斜」がついています。

この傾斜は、投手がプレートを蹴って(プッシュオフして)前に踏み出す際、重力と地面からの反発力を効果的に利用し、「より速い球を投げる」ために設計されています。

傾斜のおかげで、投手は体重を前方に移動させやすくなり、身体の大きな連動(運動連鎖)を生み出しやすくなります。単なる土の山ではなく、投球動作の物理を最大限に引き出すための、精密に計算された「滑り台」なのです。

トリビア 6-4:プレートは「埋め込み式」でなく、動かせる

ピッチャープレート(投手板)は、硬いゴム製の長方形の板ですが、コンクリートで完全に固定されているわけではありません。プレートの左右とホーム側、一塁・三塁側に向けての地面からの高さは厳格に定められていますが、実際にはプレートを少し掘り下げて「埋め込む」形で設置されており、交換のために取り外しが可能です。

プロの球場では、投手のスパイクでプレートの手前や奥の土が削れて深いくぼみができるため、グラウンドキーパーは試合中やイニングの間に頻繁にプレート周辺の土を均したり、新しい土を足したりとメンテナンスを行います。プレートを「蹴る」場所は、選手の足で常に形を変える、生きている場所なのです。

トリビア 6-5:日本とMLBで異なる「マウンドの土」の調合

マウンドの土は、単なる土ではありません。日本のプロ野球のマウンドは、主に「黒土(くろつち)」が使われ、これに赤土や粘土がブレンドされています。黒土は水はけが良い一方で乾燥すると滑りやすい性質があります。

一方、メジャーリーグのマウンドの土は、日本のものよりも「粘土質」の割合が非常に高いのが特徴です。粘土は滑りにくく、踏み込んだ際に足がブレにくいため、プレートを強く蹴り出してボールに力を伝えやすくなります。

日米の投手が、相手国のマウンドに慣れるのに苦労するのは、この「土の粘り気と硬さ」の違いからくる踏み込み時の感覚の差が大きいためです。

トリビア 6-6:「プレートの踏み位置」が球種とコースを決める

投手はプレートのどこを踏んで投げるかによって、投球の角度やコースを戦略的に変えています。

例えば、右投手の場合、プレートの三塁側(左端)を踏んで投げると、ボールは角度をつけて一塁側(右打者の外角、左打者の内角)に向かいます。 逆にプレートの一塁側(右端)を踏むと、一塁側に角度がつくため、左打者の外角、右打者の内角へ食い込むようなボールが投げやすくなります。

これは、マウンドから本塁へ向かうライン(投げ手の肩のライン)と、本塁を通過するラインの「角度」を意図的に変える戦術であり、プレートのどの24インチ(約61cm)を使うかが、配球の基本戦略の一つになっています。

トリビア 6-7:マウンドは「聖域」ではないが、神聖視されてきた

野球場を訪れると、マウンドの周囲だけがロープで囲まれていたり、マウンドを横切る行為が厳しく制限されていたりする場合があります。これは、「マウンドの土の形状を崩さないため」という物理的な理由が第一です。

しかし、日本では「マウンド=投手だけの聖域」という文化的な解釈が非常に強く根付いています。かつては、試合後に投手だけがマウンドの土をならす「儀式」もありました。これは、打者から身を守るために土を盛り始めた歴史と、投手というポジションの孤高な役割が相まって生まれた、日本特有の「精神性の象徴」と言えます。

トリビア 6-8:「キャッチャーのサイン」が見やすいように土の色が工夫されている

マウンド周辺の土は、ホームプレート付近の土の色とわずかに変えられていることがあります。これは、守備側の選手全員、特に投手が捕手(キャッチャー)が出すサインを見やすくするための工夫です。

土が明るい色だと、サインを見る際に背景と手袋(ミット)とのコントラストが低くなり、目が疲れやすくなります。そのため、サイン交換の際に背景となる部分には、コントラストがつきやすいように色が濃い土が使われることが多いのです。観客には気づかれないような、細部にわたる視覚的配慮がなされています。

トリビア 6-9:プレートの裏に書かれた「隠しナンバー」

ピッチャープレートには、裏側に製造業者や品質管理番号が刻印されています。このプレートは、公認野球規則によって「白いゴム製」と素材が定められていますが、実はゴムの中に「木製の芯」が入っています。

これは、投手がプレートを蹴った際の反発力や安定性を高めるためです。ゴムだけだと踏み込んだ際に沈み込みすぎてしまい、力を逃がしてしまいます。硬い芯が入っていることで、投手は地面からのエネルギーを効率よく受け取り、投球に活かすことができるのです。プレートは、単なる目印ではなく「踏み台」として機能しているのです。

トリビア 6-10:リリーフカーがマウンドを避けて通る理由

プロの試合でリリーフ投手が登板する際、リリーフカー(カート)で移動するのが一般的ですが、リリーフカーは決してマウンドの上を横切ったり、マウンドの傾斜部分に乗り入れたりしません。

これは、リリーフカーの重みで土の固さや傾斜角度がわずかでも変わってしまうと、後に投げる投手の投球動作に影響を与えてしまうからです。特に粘土質で固められたマウンドの土は、一度形が崩れると元に戻すのが困難です。

選手交代という一時的な演出のために、投手のパフォーマンスを左右する「マウンドの精密さ」を犠牲にしないという、現場のグラウンドキーパーたちの厳格なこだわりが背景にあります。

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