2026/02/26

【The Week of MLB #8】 Exclusive Interview with Angels’ Yusei Kikuchi — He Talks About the Message Behind His New Book / 2026年の鼓動:スプリングトレーニングに見る「新時代の序曲」と、菊池雄星が語るベテランの矜持

2026年の鼓動:スプリングトレーニングに見る「新時代の序曲」と、菊池雄星が語るベテランの矜持

球というスポーツにおいて、春は単なるカレンダーの一枚ではない。それは魂の深呼吸であり、真っさらなスコアブックに新たな神話を書き込むための神聖な儀式だ。2026/02/26、アリゾナの乾いた空気とフロリダの湿り気を帯びた風が運んできたのは、例年とは明らかに異なる密度の熱狂だった。ワールドシリーズ3連覇という、現代野球の限界に挑むドジャースの威容。海を渡った若き至宝たちが上げる産声。そして、審判の肉眼という聖域にテクノロジーが介入する静かな革命。この春、私たちが目撃しているのは、単なるシーズンの準備ではない。それは野球という競技が次なる次元へと跳躍しようとする、壮大な序曲なのだ。

SPECIAL FOCUS: THE DODGER DYNASTY

スプリングトレーニングの開幕戦は、冬の間飢えていたファンにとって歓喜の扉が開く瞬間だ。しかし、2026/02/22に行われたドジャース対エンゼルスのオープン戦が世界に与えた衝撃は、単なる幕開けの祝祭を遥かに超えていた。スコアボードに刻まれた15対2という数字。それはドジャースという組織が積み上げてきた圧倒的な戦力補強の成果を、残酷なまでの正確さで示した軍事演習のような趣すらあった。

この試合で私の視線を釘付けにしたのは、山本由伸の初登板だ。2回途中でマウンドを降りるまでのわずか30球。しかし、その一球一球には、精密機械という言葉すら生ぬるいほどの支配力が宿っていた。奪った3つの三振。データ上の圧倒はもちろんだが、特筆すべきはそのリリースの瞬間における指先の感覚だ。2026年のドジャースの運命を左右するであろう若き右腕は、メジャーの強打者たちを翻弄し、3連覇への道筋が単なる夢想ではないことをマウンド上で証明してみせた。

そして、その山本の背中を援護するのが、1番・指名打者という新たな役割を担う大谷翔平だ。初回の第1打席、サードへの内野安打。記録上は控えめな一本に見えるかもしれないが、これこそが大谷にとっての2026年初安打であり、新シーズンへの宣戦布告となった。リードオフマンとして機能する大谷の存在は、相手投手にとって試合開始直後から悪夢を見るようなものだろう。

これらのスターたちが一斉に始動したことで、メジャーリーグ全体の注目度は一つの臨界点を突破しようとしている。ドジャースという銀河系軍団が引き起こす地殻変動は、野球というマーケットをかつてない規模へ押し上げている。しかし、その光が強ければ影もまた濃くなる。華やかなスターたちの滑り出しの裏で、海を渡ったばかりの新たな挑戦者たちもまた、メジャーという巨大な荒波の洗礼の中に身を投じていた。

海を越える意志:村上宗隆と岡本和真、そして松井裕樹の試練

日本のファンが固唾を飲んで見守っていたのは、村上宗隆と岡本和真という、日本が誇る二人の至宝がメジャーの土を踏む瞬間だったはずだ。ホワイトソックスの村上宗隆は、デビュー戦からメジャー流の洗礼を受けた。しかしそれは、投手からの剛速球ではなく、交通渋滞という意外な形でもたらされた。試合開始直前にようやく球場に到着するというハプニング。精神的な動揺があってもおかしくない極限状態で、彼は4番・一塁としてスタメンに名を連ねた。

そこで見せたのが、驚異的な適応能力だ。2026/02/22、3回表の第2打席で放った痛烈なメジャー初安打に続き、4回表の第3打席ではセンターへ2点タイムリー二塁打を叩き込んだ。環境の変化を力に変えるそのマインドセットは、彼が単なる大砲候補ではなく、一人のプロフェッショナルとして完成されていることを物語っている。

一方、ブルージェイズの岡本和真もその輝きを放ち始めた。2026/02/24のメッツ戦、第1打席で放った打球はまさに圧巻の一言だ。バックスクリーンを直撃するメジャー初アーチ。守備でも6番・三塁として軽快な動きを見せ、攻守両面で自らの価値を強烈にアピールした。彼がメジャーの荒波を生き抜くための鍵は、この一発に象徴される長打力と、三塁手としての堅実さの融合に他ならない。

既にメジャーの顔となりつつある鈴木誠也の充実ぶりも特筆すべきだ。2026/02/21のホワイトソックス戦、3番・センターで出場した彼は、第1打席でセンターへ豪快な一発を叩き込んだ。契約最終年となる2026年シーズン、そして2大会ぶりのWBC出場に向けて、その仕上がりは完璧に近い。しかし、野球の神様は時として残酷ないたずらをする。2026/02/23のジャイアンツ戦、ライトへヒットを放ちながらも、そこからトリプルプレーという極めて珍しいシーンに巻き込まれたのだ。

そして、最も心を痛めたのがパドレスの松井裕樹を襲った悲報だ。ライブBPでの登板中に股関節付近を痛めて降板。重症ではないとの見通しだが、WBCの出場辞退が確実となった。日本代表唯一の3大会連続出場が期待され、ブルペンの精神的支柱となるはずだった左腕の離脱は、連覇を目指すチームにとって計り知れない痛手だ。成功と挫折が隣り合わせのキャンプにおいて、個人の成績が残酷なまでにチーム内のサバイバルに直結する。

テクノロジーは「公平性」をどこまで定義できるか:ABSシステム導入の波紋

選手たちの肉体的な戦いと並行して、この春、野球の根幹を揺るがす破壊的イノベーションが進行している。それが、ABSチャレンジシステム(通称ロボット審判)の導入だ。審判の判定という、古くから野球の人間臭さを象徴してきた領域に、テクノロジーが本格的に介入し始めたのである。

今回のシステム運用は、単に全自動でストライクを判定するものではない。チャレンジという形式を取るのが最大の特徴だ。判定に不服がある際、選手が頭の上をポンポンと叩く合図を送ると、球場の大型モニターに判定映像が瞬時に映し出される。このシステムがもたらす最大の変化は、ストライクゾーンの定義そのものにある。

マイナーや独立リーグでのテスト結果では、非常に興味深い現象が報告されている。例えば、上から降ってきた大きなカーブが、バッターの手前でワンバウンドしたとしても、その平面のゾーンを通過していればストライクと判定されるのだ。これは、これまでの人間の感覚とは大きく乖離する。また、ゾーンの高さが選手の身長によって個別に設定される点も重要だ。これはバッティングフォームの変化によってゾーンが変動することを防ぐ措置であり、いわば本来の野球ルールへの回帰とも言える。

このシステムは、キャッチャーのフレーミング技術という芸術を殺すことになるのだろうか。あるいは、判定への不信感を払拭し、純粋な球威とスイングスピードの勝負を加速させる福音となるのか。テクノロジーが進化すればするほど、判定という不確定要素に頼らない真の技術が求められるようになる。しかし、システムが完璧に近づくほど、グラウンド上で呼吸する人間の知恵や経験が、より貴重な輝きを放つようになるというパラドックスを、私は信じてやまない。

菊池雄星が到達した「野球と人生」の均衡:11対1の美学

効率化とデータ化が極限まで進む現代野球において、メジャー8年目を迎えた菊池雄星という左腕が放つ存在感は、ある種の救いのように私には映る。35歳、ベテランと呼ばれる年齢に達した彼が、今、何を思いマウンドに立っているのか。独占インタビューで見せた彼の言葉には、単なるアスリートの枠を超えた人生の真理が宿っていた。

現在の菊池は、驚くほど冷静に自分自身を客観視している。95マイルから97マイル(約153〜156キロ)が安定して出ていると語る通り、フィジカル面での充実は数値が証明している。特筆すべきは、昨年わずかに低下したストレートの質に対する修正プロセスだ。彼はそれをピッチングの軸と呼び、オフシーズンをかけて丹念に磨き直してきた。35歳にしてなお、自らの可能性をこれから伸びていくと確信できる精神力。その源泉は、彼が2月に上梓した著書『理想の自分に近づくための77の習慣』にも記されている。

「なんでそんなに野球で落ち込むんだ? 野球は人生の一部だぞ」

かつての彼にとって、野球は人生のすべてだった。しかし、10年間怪我なくローテーションを守り続けたマイク・リークは、野球を人生という大きな絵の中の一部として俯瞰していた。菊池が到達した境地、それは11対1という比率の美学だ。人生という広大な11の領域の中に、野球という1の情熱が鋭く、しかし冷静に配置されている。この視点があるからこそ、打たれても「はい、次」と切り替えられる。世界一のピッチャーを目指すのと同じくらい、怪我をせずに5日に1回、淡々とマウンドに上がり続けること。監督に菊池雄星の名をラインナップに書かせること。その継続性こそが、プロフェッショナルとしての究極の誠実さなのだ。

直近3年連続で30試合以上に登板し続けている菊池のスタッツは、まさにこの習慣の産物だ。若手主体のエンゼルスにおいて、黙々と準備を重ねる彼の姿は、若手たちの生きた教科書となっている。ルールがなく、サボろうと思えばいくらでもサボれるメジャーの世界。そこで若手は必ずベテランを見る。菊池が守り続ける習慣は、未来のエンゼルスを支える無形の資産として、今この瞬間もチームに深く根を張っているのだ。

世界が交錯するWBC:ダークホースたちの台頭と「ルーツ」への旅

菊池が個人の矜持をかけてシーズンに挑む一方で、野球界の視線はもう一つの巨大な熱源、WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)へと注がれている。この大会は、もはや単なる国別対抗戦ではない。それぞれの国が持つ野球文化、および選手たちが自らのルーツを再確認する、アイデンティティの祭典だ。

今大会の注目は、いわゆる優勝候補以外のダークホースたちの台頭にある。イタリアやカナダといったチームには、MLBのトッププレーヤーたちが続々と集結している。

  • イタリア代表: ビニー・パスカンティーノ(ロイヤルズ)
  • カナダ代表: ジョシュ・ネイラー(ガーディアンズ)、ジェームソン・タイヨン(カブス)
  • イギリス代表: ジャズ・チザムJr.(ヤンキース)

特にイギリスのジャズ・チザムJr.のようなお祭り男の参戦は、野球の楽しさを世界に広めるアイコンとしてこれ以上ないキャスティングだ。彼の華やかなプレイスタイルや、良い意味で目立つ佇まいは、世界中の子供たちに強烈なインスピレーションを与えるだろう。また、オランダ代表のケンリー・ジャンセンのエピソードも興味深い。2009年の第2回大会では強肩のキャッチャーとして出場していた彼が、その後ピッチャーに転向し、メジャーを代表するクローザーとして今大会に戻ってくる。

JTBの公式ホスピタリティパッケージが全種類完売したという事実は、2026年大会への期待がいかに異常な高まりを見せているかの証明だ。ファンは試合を通じて、この選手は、この国にルーツがあったのかという新たな発見をする。それは野球のグローバル市場を拡大させるだけでなく、競技そのものへの理解を深める機会にもなっている。国家の誇りと、個人のルーツ。それらが一つに溶け合う場所で、私たちは野球というスポーツが持つ真の力を目の当たりにすることになる。


2026年という年は、後世の野球史において変化が加速した年として記憶されるに違いない。ドジャースが圧倒的な力で3連覇の夢を追う一方で、村上や岡本といった新世代がその牙城を崩しようと爪を研いでいる。システム化されたABS判定がフィールドの景色を変えようとする中で、菊池雄星のようなベテランが人間としての深みで勝負を挑んでいる。

これらすべての事象は、バラバラに存在しているわけではない。すべては野球という一本の大きな川の流れの中で繋がっている。私は、この春の取材を通じて確信した。野球の魅力は、データの裏側にある人間ドラマにこそ宿るのだということを。どれだけテクノロジーが進化しても、最終的にボールを投げ、バットを振るのは、葛藤し、成長し、誇りを胸に戦う人間である。その一投一打に込められた意志が、観る者の心に火を付け、新たな時代を作っていく。

スプリングトレーニングが終わり、レギュラーシーズン、そしてWBCの熱狂が幕を開ける。そこには、まだ誰も見たことのない、しかし誰もが待ち望んでいた物語の続きが待っている。

最後に、あなたに問いかけたい。この劇的に進化する野球の景色の中で、あなたはこの春、どの選手の、どの軌跡を追いかけるだろうか? そこに、あなた自身の情熱の所在が見つかるはずだ。私は、その熱狂の最前線で、再びペンを走らせる準備ができている。

📔 “The Week of MLB #8: Exclusive Interview with Angels’ Yusei Kikuchi — He Talks About the Message Behind His New Book”

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