2025/11/27

[Trivia] 😁木製バットに関するトリビア  / Wooden Bat Trivia

木製バットに関するトリビア / Wooden Bat Trivia

木製バットに関するトリビア / Wooden Bat Trivia

トリビア 2-1:バットの「ロゴマーク」はボールを当ててはいけない場所にある

プロ野球選手がバッターボックスで構える際、必ずバットのロゴ(メーカー名)を自分の方(手前)か、あるいは投手の側(裏側)に向けていることに気づくはずです。これには明確な理由があります。

木製バットには木目があり、ボールを打つのに適した「強い面(柾目または板目)」と、耐久性が低い「弱い面」が存在します。メーカーは、選手が誤って弱い面で打ってバットを折ってしまわないよう、「ボールを当ててはいけない弱い面(またはその裏)」にわざとロゴを印刷しています。

つまり、「ロゴが見える状態で構える」=「ロゴのない側面(強い面)がボールに向く」ようになっているのです。バットを折らずに長く使うための、メーカーからの無言のメッセージといえます。

トリビア 2-2:バリー・ボンズが変えた「メイプルバット」革命

かつて木製バットの主流は「ホワイトアッシュ」というタモ材の一種でした。アッシュ材は適度な「しなり」があり、ボールを運ぶ感覚に優れていました。しかし、2000年代初頭にバリー・ボンズが「ハードメイプル(カエデ)」のバットを使って本塁打を量産したことで、歴史が変わりました。

メイプルはアッシュよりも硬く、しなりが少ない代わりに「反発力」と「表面の硬度」が高いのが特徴です。ボンズの成功以降、MLBやNPBでメイプルへの乗り換えが急増しました。昔ながらの「しなって飛ばす」技術よりも、硬い木で「弾き返す」パワー野球への転換を、バットの素材変更が後押ししたのです。

トリビア 2-3:MLBのバットにある「小さな黒い点」の秘密

メジャーリーグ中継で打者のバットをよく見ると、グリップの少し上のあたりに、マジックで書いたような小さな黒い点(インクの染み)があることがあります。これは「インクドット・テスト」と呼ばれる、MLBの厳格な品質検査の証です。

メイプルやバーチ(カバ)などのバットは、木目が真っ直ぐ通っていないと、折れた際に鋭利な破片となって飛び散りやすく、投手や観客に刺さる危険性があります。そこで、木肌にインクを垂らし、インクが滲む方向を見ることで「木目の傾き(Slope of Grain)」を測定しています。

木目の角度が3度以内など、厳しい基準をクリアしたバットにのみ、このドットが残され、公式戦での使用が許可されるのです。

トリビア 2-4:かつて存在した「圧縮バット」とその禁止理由

日本のプロ野球では、1980年頃まで「圧縮バット」というものが公認されていました。これは木材を樹脂加工して高圧力でプレスし、人工的に硬度を高めたバットです。

圧縮バットは金属バットに近い高い反発力を持ち、王貞治選手をはじめ多くの打者が愛用しましたが、「飛びすぎる」ことと「折れた際の音が金属音に近く、打球判断が難しい」「折れ口が鋭利で危険」という理由から、1981年にコミッショナー通達により禁止されました。

この禁止以降、日本のプロ野球の本塁打数は一時的に激減しました。道具の進化(ドーピング的な加工)と、競技の安全性・記録の連続性のバランスを巡る、日本球界の大きな転換点でした。

トリビア 2-5:伝説の素材「アオダモ」の枯渇問題

日本人選手、特にイチロー選手などが愛用したことで知られるバット素材に、北海道産の「アオダモ」があります。アオダモは寒冷地でゆっくり育つため年輪が緻密で、強靭な粘りと「ムチのようなしなり」を持つ、世界最高峰のバット素材と言われてきました。

しかし、バットに適した太さに育つまでには60〜70年という長い年月がかかります。計画的な植林が行われてこなかったため、現在では良質なアオダモはほぼ枯渇状態にあります。

現在、プロ野球界全体で「アオダモの森」を再生する植樹活動が行われていますが、今植えた木がバットになるのは半世紀以上先の話。現代の選手にとって、最高級アオダモバットはもはや入手困難なオーパーツになりつつあります。

トリビア 2-6:コルクバットは「飛ぶ」わけではない?

バットの先端に穴を開け、中にコルクを詰める不正行為「コルクバット」。サミー・ソーサなどの強打者が使用して処分された例がありますが、物理学的な実験によると、実は「コルクを入れたからといって、トランポリン効果でボールが遠くに飛ぶわけではない」ことが分かっています。

むしろコルクにすることでバットの質量が減り、運動エネルギー自体は下がります。ではなぜ使うのか? 最大のメリットは「バットが軽くなることで、スイングスピードが上がる」ことと、「内角の速球に振り遅れなくなる」ことです。

「当たれば飛ぶ」魔法の杖ではなく、「当たる確率とヘッドスピードを上げる」ための不正改造というのが科学的な見解です。

トリビア 2-7:バットの先端がくり抜かれている「カップバット」

多くのプロ選手のバットを見ると、先端がお椀のようにくり抜かれています。これは「カップバット」と呼ばれ、ルール上も深さや直径の制限付きで認められています。

木を削ることで先端が軽くなり、バットの重心がグリップ側に寄るため、操作性が向上し、スイングスピードが上がります。 また、湿気による重量変化を調整するために削る場合もあります。

しかし、先端を削るということは、ボールとコンタクトする部分の「肉厚」を薄くすることでもあり、当たり所が悪いと先端が裂けるように割れてしまうリスクもあります。操作性を取るか、芯の強さを取るか、選手の好みが分かれるポイントです。

トリビア 2-8:イチローがバットを「ジュラルミンケース」で運んだ理由

イチロー選手は、自身のバットを特製のジュラルミンケースに入れ、乾燥剤と共に厳重に管理していました。これは単なるこだわりではなく、木製バットが「湿度」に極めて敏感だからです。

木材は湿気を吸うと重くなり、同時に繊維が柔らかくなって反発力が落ちてしまいます。数グラムの重量変化や、わずかな打感の違いを嫌う一流選手にとって、日本の高温多湿な気候は敵です。

「常に一定の水分含有量(ベストな乾燥状態)を保つ」ことこそが、シーズンを通して安定したパフォーマンスを発揮するための極意であり、バット管理はもはや精密機器の扱いと同等なのです。

トリビア 2-9:折れたバットは「箸」に生まれ変わる

シーズン中、プロ野球全体では年間数千本、数万本ものバットがへし折られています。かつてはこれらは全て廃棄処分(焼却やゴミ)されていましたが、現在ではリサイクル活動が進んでいます。

その代表例が「かっとばし!!」というシリーズの「お箸」です。バット材(アオダモやメイプル)は非常に硬く、耐久性に優れているため、箸や靴べらといった日用品に加工するのに最適です。

折れて役目を終えたバットが、今度は食卓でファンの食事を支える道具になる。この活動は、貴重な木材資源を無駄にしないだけでなく、バット素材の植林資金を生み出すサイクルにもなっています。

トリビア 2-10:バットの「音」で外野手は守備位置を変える

木製バットがボールを捉えた時の「カキーン(あるいはボコッ)」という打球音。これは単なる音ではなく、守備についている野手、特に外野手にとっては重要な「情報源」です。

熟練した外野手は、打球音の高さや響きで「芯で捉えたか」「詰まったか」「先っぽか」を瞬時に判断し、打球が上がる前に一歩目のスタートを切ります。

乾いた高い音がすれば伸びる打球、鈍い音がすれば失速する打球と判断します。ドーム球場など反響が大きい場所や、観客の歓声が凄まじい場面では、この「音」の情報が遮断されるため、外野守備の難易度が格段に上がると言われています。音もまた、プレイの一部なのです。

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