エースの咆哮、崖っぷちの逆襲。ソフトバンク vs 日本ハム クライマックスシリーズ Game3 2025年10月17日
2025 パーソル クライマックスシリーズ パ ファイナルステージ第3戦が10月17日、みずほPayPayドームで行われた。福岡ソフトバンクホークスがリーグ優勝のアドバンテージ1勝を含む3連勝で、日本シリーズ進出に王手をかけて迎えた一戦。後がない北海道日本ハムファイターズが、投打の噛み合いを見せ6-0の完封勝利を収めた。エース伊藤大海が8回無失点11奪三振の快投でチームを牽引し、打線は郡司裕也の4打点などで古巣相手のソフトバンク先発・上沢直之を攻略。崖っぷちで踏みとどまり、逆襲への望みを繋ぐ1勝をもぎ取った。
📊 スコア表:一発攻勢とエースの粘投
| チーム | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 | 安 | 失 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 日本ハム | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 4 | 0 | 0 | 6 | 9 | 0 |
| ソフトバンク | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 5 | 0 |
- 球場名: みずほPayPayドーム
- 観客数: 40,142人
- 試合時間: 3時間14分
- 勝利投手: 伊藤 大海 (1勝0敗)
- 敗戦投手: 上沢 直之 (0勝1敗)
- 本塁打:
[日本ハム] レイエス 2号(4回表ソロ)
[日本ハム] 山縣 秀 1号(7回表ソロ)
⚾ 得点経過
- 【1回表】一死一三塁の場面で、日本ハム・4番 郡司がライトへきっちりと犠牲フライを放ち、幸先よく先制。 (日 1-0 ソ)
- 【4回表】日本ハム・3番 レイエスが、古巣相手の先発・上沢からレフトスタンドへソロホームランを叩き込み、貴重な追加点。 (日 2-0 ソ)
- 【7回表】日本ハム・7番 山縣がレフトスタンドへソロホームランを放ち、リードを広げる。 (日 3-0 ソ)
- 【7回表】なおも二死満塁のチャンスで、日本ハム・4番 郡司が投手・木村光からセンターへ走者一掃となるタイムリーツーベースを放ち、試合を決定づける。 (日 6-0 ソ)
🧾 スターティングメンバー(ポジション別対比)
| ソフトバンク (先発: 上沢 直之) | 位置 | 日本ハム (先発: 伊藤 大海) |
|---|---|---|
| 1. 柳田 悠岐 (指) .250 | 指 / 左 | 1. 水谷 瞬 (左) .200 |
| 2. 川瀬 晃 (遊) - | 遊 / 捕 | 2. 田宮 裕涼 (捕) .000 |
| 3. 栗原 陵矢 (三) .375 | 三 / 指 | 3. レイエス (指) .444 |
| 4. 山川 穂高 (一) .429 | 一 / 三 | 4. 郡司 裕也 (三) .000 |
| 5. 柳町 達 (左) .500 | 左 / 一 | 5. 清宮 幸太郎 (一) .250 |
| 6. 牧原 大成 (右) .000 | 右 / 右 | 6. 万波 中正 (右) .429 |
| 7. 野村 勇 (二) .167 | 二 / 遊 | 7. 山縣 秀 (遊) .000 |
| 8. 海野 隆司 (捕) .200 | 捕 / 二 | 8. 水野 達稀 (二) .000 |
| 9. 周東 佑京 (中) .000 | 中 / 中 | 9. 五十幡 亮汰 (中) - |
🧠 Baseball Freak的分析──“語れる打撃”と“構造の揺らぎ”
🔬 注目打者の分析
今日の主役は、投手が伊藤大海なら、野手は間違いなく郡司裕也だろう。第2戦まで当たりがなかった彼を「4番」に抜擢した新庄監督の采配。その重圧の中、郡司は期待を遥かに超える働きを見せた。まずは初回、一死一三塁。ここで求められる最低限の仕事、ライトへの先制犠牲フライ。そして圧巻は7回、なおも二死満塁、投手交代直後の難しい場面。ここでセンターへ走者一掃の3点タイムリー二塁打だ。6点中4点を叩き出す、まさに“語れる打撃”。これは単なるラッキーボーイの活躍ではない。機能不全に陥っていた打線の中で、新庄監督が彼を「4番」というキーストーン(要石)に据えた。その構造的期待に応えたメンタリティこそ、この勝利の最大の原動力だ。
📐 打線の構造分析
日本ハムは、この崖っぷちで「打線の構造」を大胆に変えてきた。1番に水谷を抜擢し、不調の田宮を2番に置き、絶好調のレイエスを3番、そして郡司を4番に据えた。この「構造変更」こそが、勝利の設計図だった。象徴的なのは初回。1番・水谷がヒットで出塁、2番・田宮がセカンドゴロできっちり進塁打、3番・レイエスが四球を選び、4番・郡司が犠飛で返す。これ以上ない完璧な流れだ。数字(打率)だけ見ればチグハグに見える打順が、役割(機能)として完璧に連動した。これぞ新庄野球の真骨頂。対するソフトバンクは、柳田、栗原、山川、柳町と好調な打者を並べながら、伊藤の前にわずか5安打で沈黙した。元同僚・上沢を援護できなかった打線の"重さ"か。あるいは伊藤の"気迫"が、データ上の「好調」という概念を上回ったのか。数字と現実のギャップが、残酷なまでに浮き彫りになった。
📈 継投の構造維持
「去年、ここで投げて本当に悔しい思いをした」。ヒーローインタビューで伊藤大海はそう語った。その言葉を体現する、8回116球、11奪三振、無失点。これはもう「継投」ではない。エースが「構造」そのものになった瞬間だ。彼がマウンドで示した「中は熱く、外は冷静に」というピッチングが、ソフトバンク打線の勢いを完全に殺した。そして9回を締めたのは、本来先発の山崎福也。これぞCSの総力戦。一方のソフトバンク。この大一番に「元日本ハム」の上沢を立てた。しかし、その古巣の執念の前に7回途中で降板。元同僚である有原、上沢で連勝し、スイープで決めるという鷹のシナリオは、ここで崩れた。日本ハム側から見れば「元同僚に連敗する」という屈辱を回避した(参考記事1)が、ソフトバンク側から見れば、最も信頼する一人で流れを止められた形だ。この1敗は、単なる1敗以上の"揺らぎ"を王者にもたらしたかもしれない。
🔮 今後の展望
日本ハムは、土壇場で息を吹き返した。伊藤の快投と、ヒーローインタビューで明かされた清宮の「(昨日)キャリーオーバーしてるんで明日は点取ります」という(実際に打ったのは郡司だが)チームの雰囲気が、明日以降の戦いにどう作用するか。アドバンテージを含め1勝3敗と、依然として崖っぷちであることに変わりはない。だが、「負けたら終わり」の緊張感が続く限り、この日のような研ぎ澄まされた集中力は維持できるはずだ。
対するソフトバンク。圧倒的有利な状況は変わらない。だが、伊藤に完璧に抑え込まれたこの完封負けが、チームのメンタルにどう影を落とすか。短期決戦において、一度相手に渡してしまった「流れ」は、時に数字上のアドバンテージを無意味化するほどの力を持つ。鷹ベンチのコメントにもあったように、いかに「切り替えて」臨めるか。この敗戦を単なるアクシデントとして処理できるかどうかが問われる。
ソフトバンクは、この「揺らぎ」をねじ伏せ、王者の力で押し切れるのか。それとも、日本ハムが「絶対勝つだー!」というエースの咆哮を、奇跡への序章とするのか。明日の一戦が、このファイナルステージの空気を決定づける。
📺 試合ハイライト
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